「新しい生活様式」だとしても 子どもたちには他者と出会う豊かさを伝え続けたい

2月末に休校が決まってから、ずっと、
子どもの過ごし方のことを考えて、発信してきました。
子どもの育ちと遊びが私の専門分野であり
そのことの発信が、きっと
誰かのお役に立てると思ったからです。
ほぼオンライン。
子どもに提供したワークショップも。
毎朝実践した「朝の会」も。
遊びの情報を発信するのも。

オンラインでコミュニケーションを取り
オンラインがなければ
何も動けなかった3か月。
その期間を振り返ってみれば、
オンラインにどっぷりだったのに、というか、だからこそ、
リアルに出会い、お互いの空気感を感じないと伝わらないものが
確かにあるなぁと、しみじみと思います。

それは例えば、
日常で出会う下記のような経験。

子どもが2人、壁と棚の間の
せまいところで身を寄せ合って
お互いの呼吸や体温を感じながら
親密さを確かめ合う姿。

小さな子どもの肌のやわらかさや匂い。

手をつないでいるだけなのに
子どもに、勇気が満ちてきて
ぱっと手を振り払って走り出す瞬間。

音楽を聴くときに、空気がびんびんと動くことを
ともに味わい、得られる感動。

お相撲ごっこに夢中になりながら
どれくらいのチカラ加減ならけがをさせないか
身体の小さい人や、力の弱い人を傷つけないか
日を重ねるごとに、配慮できるようになる姿。

大勢がわーっと盛り上がる熱気で
何でもやれそうな気持ちになる高揚感。

おいしいものを、誰かと一緒に食べる時の
ひとりで食べるのとは違う味わいの深さ。

人は、1人では生きていけないから。
どんなに人と関わることが苦手な人も
1人では生きていけないから。

誰かとの関わりを直接的に感じ
接点を持ちながら生活することは
生きていくための基礎に近いこと、
言わば、人としての営みだと
つくづく、感じるのです。


「新しい生活様式」が始まるそうです。
マスクの着用や、リモートワーク継続の推奨は
もちろん必要なことだと思います。

でも、人と人の直接的な関わりを
減らすのは、「新しい生活様式」とは
違うのではないかしら?
対処法(治療薬やワクチン)が確立するまでの
「今の、特に気を付けないといけない時期の
 特別な生活様式」ですよね??

人と人とが出会い、
近づき、向き合い、関わり合うことを
取り除きすぎることは
人が人としてあることを
否定してしまうことに繋がりそうで
少しばかりこわく感じます。

こんな時期でも、子どもたちには
他者と関わり合える豊かさを
忘れて欲しくはないし、
関わり合える相手を尊敬しあって欲しい。
人との親密さを、
「密になってはいけないから」と
避けすぎないで欲しい。

今すぐに、とは思わないけれど。
人と人とが、五感で関わり合える経験を
時間をかけて、ゆっくりと
でも確実に、
取り戻していきたいよね、と思うのです。
そこは、オンラインでは補いきれないのです。

新しい生活、というものが
衛生意識を少しばかりアップデートするものであり
人と人とのリアルな関わりを
否定するものにはなりませんように。

・・・たぶん、誰も、人と人との関わりを
否定しようなんて思っていない。
そんなことは分かっています。
でも、その当たり前のことを
あえて言葉にすることも、大事かな、と思いました。