おすすめ絵本『パンやのくまさん』

絵本

風が冷たくなると、パンの焼けるにおいに、ほこっとした気持ちになりませんか?

(実際、夏場よりも冬場の方はパン屋さんの売り上げは良いらしいと聞いたことがあります。)

 

ちいちゃいこどもたちも、パンは大好き。

だから、こんなタイトルの本を目にすると

ほのぼのとしたファンタジー、

あるいは、お店屋さんごっこ的なパン屋さんが出てくるのかしら、と思います。

『パンやのくまさん』 フィービ&セルビ・ウォージントン作・絵  まさきるりこ訳/福音館書店

ところが、いい意味で期待を裏切られる本です。

 

くまさんは、それはそれは働き者。

朝早く起きてパンを作り、朝のうちは車に乗せて街へ売りに行き、午後からはお店番。

1日の仕事が終わると、売り上げを数えて、明日に備えてまたよく休みます。

その淡々とした日常が、リアリティを持って描かれているのです。

主人公、くまさんじゃなくていいんじゃない?!って思うくらい、甘くない。甘くないのです。

 

こどもだからと、可愛い動物のお客さんが訪れたり、その動物の形のパンを焼いたり

この世にないほど大きなパンを焼いたり・・・というエピソードは全く登場しません。

(もちろん、そういうエピソードを登場させて、ちゃんとこどもが大好きになれる、すてきな物語も沢山あります。)

普通のパン屋さんの普通の一日を綴っている物語が、充分にこどもに響くのだと

その確信を持った作者の姿勢が、とてもすてきだなぁ、と思うのです。

 

このくまさんのシリーズは、「パンやさん」以外にも

「せきたんやさん」「ゆうびんやさん」「うえきやさん」と様々な職業が登場します。

どの本も、作者がそれぞれの職業に敬意を払い、

働くありのままの姿こそが物語であり、尊いと感じていることが伝わってきます。

 

その傍らで、朝ごはんの紅茶をちゃんと読む描写など、丁寧な暮らしぶりも描かれていて

そこにもほんわかした気持ちになるのでした。