こどもミュージアム

こどもミュージアムを創りたい、と思っています。「チルドレンズミュージアム」でもいいし、「子どもの城」でもいいのですが、とにかく、子どもたちが目一杯遊ぶための場を創りたいなぁ、と思っているのです。
もちろん、ここで言う「遊び」とは、ただ面白おかしいだけではなく、新しいことに興味を持ち、はじめてのことにチャレンジでき、好きなことに没頭し、やりたいことに繰り返し挑み、発見し、工夫し、考え、創り、失敗し、やり直し、笑い合い、「あーたのしかった」って言うこと全てのことが含まれています。

親子が気軽に訪れて心穏やかになれる場所

私が母親になりたてだった時は、まだ今のような仕事もしていなくて、子どもや遊びのことについては、始めて出会うことばかりでした。
子どもとの時間を過ごすために、地元の児童センターや、子どもの城の赤ちゃん広場と言った「親子で過ごすための場所」には、本当に本当にお世話になりました。そこに行けば、子どもが好むものがある。私も今日の夕飯とか散らかっている部屋から物理的に切り離される。そして、同じくらいの月齢の親子とか、職員さんとか、話ができる相手がいる。そういう場所は、外の世界と繋がっていられるパイプのような気がしていました。

だから、今、改めて、親子が気軽に訪れて、ほっと心穏やかになれる場が必要だよね、と思います。特に歩いて行ける範囲の児童館や子育て支援センターは、絶対に必要です。
同時に、わくわく準備して出かけるような、ちょっとだけ特別な場もあればいいよね、と思うのです。近所の児童館にはないような遊びの道具があったり、ちょっとしたプログラムがあったり、専門家がいるような場所。少し遠くに住む友達と、お互いに子ども同伴で会える場所。ここに行けば絶対楽しいことがある、と思える鉄板のお出かけ場所。

遊びのための基地のような場所。遊び情報が集まる拠点となる場所。そういう場所を、形にしたいと思うのです。

遊びには「環境」が大切

『あそびのじかん』と言う本を出してから、遊びについてアドバイスを求められることが増えただけでなく、私自身が遊びについて学ぶ機会も増えました。その中で、子どもたちの「遊び」が豊かなものであるために大切なことは「環境」なんだということを知りました。

保育で「環境」と言うとき、それは、子どもを取り巻く外的な要素の全てのことです。部屋のどこに、何が、どのように置いてあるのか。大人がどのように関わっているか。気温や湿度、音や光、他の人と自分との距離・・・そういうこと全てが「環境」です。
そして、保育環境は、プロである保育園や幼稚園の先生も学び続け、日々の保育の中で試行錯誤し、環境を変えては子どもの様子を見る、ということを繰り返すくらい、奥の深いテーマなのです。

保護者の方に向けても、「こういう環境を用意すると、子どもたちが、自宅や公園とは全然違う遊び方をするよね」ということがお伝えできるリアルな場があればいいと思うのです。家庭で実践できること、できないことはあると思うけれど、遊びを引き出す環境で過ごすことで、家とは違った過ごし方になる、ということを、親子ともに体験して頂けたらすてきです。

子どもが主役になれる遊びを準備したい

おもちゃにも、遊びにも、色々なジャンルがありますが、私は、子どもが自分で考えたり、工夫したり、発展させたりできる遊びを大切にしています。
バーチャルの世界ではなく、手触りや質感、温度や風、音や振動、においなど、子ども自身の身体の感覚をフル活用させる経験が大切だと思っています。
ですから、そんな風に、子どもが主役になり、五感を使い、自分なりに興味を持ったことがそのまま遊びとして広がるような、そういう環境や、遊びの道具や、自然素材に出合える場でありたいと思うのです。

例えば、下記のようなイメージです。
◇自分で実験ができて、科学的な驚きに出合える
◇生き物や、植物や、自然環境の不思議を観察できる
◇積木やブロックなどのシンプルな遊びに没頭できる
◇抽象的な素材が充分にあって見立てて遊べる
◇作ったり、描いたりする材料が充分にある
◇絵本が充分にある
◇雨の日でも充分に身体を動かせる
◇楽器、工芸、衣類などの文化に出合える

自分事と思う人が多い方がいい

子ども向け/親子向けの場所は、当事者である時期が短いという特性があります。だから、子どもが小さい時には、ものすごく身近な関心事なのに、すぐに必要がなくなってしまい、問題意識が継続されにくいのです。

だからこそ、かつて小さな子どもとの居場所に困った人にも、これから親になるかもしれない人にも、自分が子どもだった人にも、「自分事」だと思ってもらうことが、場を盛り上げるためには欠かせないと考えています。

そして、「こどもミュージアム」を自分事だと思ってもらうことで、ミュージアムのことだけではなく、そこを訪れる子どものことや、子どもが育つ環境のこと、教育のことへと、関心が広がる人が増えたらいいのになぁ、と思うのです。

私は、キッザニアでスポンサー企業にお世話になった印象が強く、この「子どもミュージアム」も、スポンサーさんの協力をお願いする形が現実的なのだろうなぁと思っています。子ども向けの場所をいくつか観てきましたが、親子が気軽に訪れる利用料と、質の高い運営をしていく運営費が釣り合わないことが悩ましい。そこはスポンサーさんに協力を仰ぐしかないんじゃないか。
そして「自分の会社はこういう施設に協力している」というきっかけから、多くの方に「自分事」だと感じてもらいたいと思うのです。自分が関わっている、自分の会社が関わっている、自分の仕事が関わっている・・・と思うことで、心理的に「こどもミュージアム」関わっている人を増やしていきたいのです。
子どものための施設が、「自分事(=マイプロジェクト)」になるってことは、子どもの遊びや育ちに想いを馳せる人がきっと増えることにつながり、それは、施設1つ作るよりも、もっともっと親子にとって居心地のよい社会になりそうな気がします。

言葉にすること

いつか、こどもミュージアムを創りたい。
こんな風に言葉にすることで、誰かの目に留まったり、想いを近しくする人に出合えるかもしれない。
なので、まだ伝えるのも気恥ずかしいけれど、ここに、こうやって、言葉にしておこうと思います。

私自身は、自分の夢を伝えることに、すごく勇気がいります。
人からどう見られるか、とか、達成しなかったらカッコ悪い、とか、きっと実現するはずないし、とか、どうでもいい気持ちが邪魔をします。

でも、これからの時代を生きる人たちは、そうじゃないといいな、と思うのです。自分の夢を堂々と伝えて、関係のない批判は聞き流し、達成しなくても堂々としていられて、自分は自分だからね、って、自然体でいられる。
こどもミュージアムは、そんな風に、自分らしく自然体で生きる人を育むことに、役立てばいいなぁ、と思っています。

すてきなミュージアムの訪問記録

2014年、家族のおかげで、世界の色々な街のMuseumを訪れる機会に恵まれました。年齢、興味、理解度の違う子ども2人(当時3歳と6歳)の率直な反応を見ながら、リアルに味わい、場の魅力を実感した経験は、私にとって大きな財産となりました。
こどもミュージアムを創りたい、と思う時、過去に訪れた魅力的なミュージアムは、きっと参考になるだろうと思っています。こどもミュージアムを創らないとしても、世界(日本も含めた世界)の様々な場所で、こどものために素晴らしい場を創ろうと工夫された場について考えることは、こどもたちとの向き合い方を考える上で多いに参考になると思い、振り返りながら記録を残しています。