私の好きな世界のMuseum:1 ボストン チルドレンズミュージアム

子どもの育ちに関わる1人として、Museumを語ろうと思ったら、まず、ボストン チルドレンズミュージアムに触れない訳にはいかない。
チルドレンズミュージアムは、子どもたちが遊びや探検を通して学ぶ場所。その中でも「自発的に見て・触れて・試して・理解する」という「ハンズ・オン(体験学習)」の考え方は、ボストン チルドレンズミュージアムから世界に広がった、と言われている、特別な場所なのだ。

参考サイト:The Association of Children’s Museums website

チルドレンズミュージアムは、確かに学びのテーマがぎゅっと詰まっている場所なのだけれど、子どもたちは誰もが、ただただ「遊びに行こう!」と思って訪れる。だから、いい!

シャボン玉を作る。
傾斜の違う坂道でボール転がし競争をする。
生き物の毛皮を虫眼鏡で見る。
劇に出演したり、劇を観たりする。
自転車のペダルを回してモーターを回す。
星座を作る。
スーパーでごっこ遊びをする。
高い高いタワーを登る。
工作をする。

そういう1つ1つの遊びが、実は学びの入り口になっている。けれど、チルドレンズミュージアムの展示を企画する人たちは、遊びの先が、どんな学びにつながるのかを想定しつつ、無理やり誘おうとしていないように見える。1つ1つの遊び環境の意図や、その先の学びについては、子どもの目に留まらないところにひっそりと案内のボードが貼ってあるけれど。

私の好きな遊びエリア①Climb

1つ1つのパーツはなだらかな曲線を持つ絨毯張りの板。外側はネットでがっちり覆われている。高く昇っているという恐怖感やプレッシャーなく、興味を持つままに這っていけばいつしか3階分の高さにまで到達。
時折、上下の板の隙間がすごーくせまいところがあって、大人は入ってはいけないような気がする。(実は大人も入ってもいいのよ、とずっと後になって教えてもらったけれど、子どもだけの世界に立ち入ってはいけないような気持ちになる。)
登ってみたくて仕方ないこどもたちは、誰も大人の助けを求めず、自分で勝手に進んでいく。ネット1枚だけれど、大人の手の届かない世界。

下から見上げていると、時々、兄が妹を助けに行く姿が見られた。自分で登ってみれば、手を貸すポイントが分かるのだろう。
大人の助けは借りられない、という状況は、こどもが持っているけれど発揮されていないチカラを引き出す。
その状況が、すごく自然に、そして安全に創り出されていることに、感嘆した。

私の好きな遊びエリア②Raceways

ボールを転がして遊ぶ。傾斜の違う坂道や、ぐるぐるとらせん状に回る装置、高いところからボールの軌跡が見えるレールなど、「ボールを転がす物理遊び」としては、定番の装置がいくつも並ぶ。
定番の装置が並ぶ空間で、秀逸だなぁと思ったのは、そこで使うのが、全部同じボールだということ。
遊びの拡がり方としては、1つのボールさえ持っていれば、「次もやってみよう」と気軽に他の遊びにもチャレンジできる。どこに持ち歩いてもいい。どの装置を試してもいい。全部同じボール。全部同じボールだから、室内のボールの総量も自然と多くなり、ボールを目一杯ため込む、という楽しみ方だってできる。ボールを1種類に絞ったことで、逆に遊びがつながり、広がりやすくなる。

また、学び視点でのメッセージとしては、物理の法則が、汎用的であり、一般化されている、ということを、感覚的に感じるのではないかなぁ。「何かの法則を証明するだけの装置」とか「この装置の中でだけ成り立っているように見えるルール」ではない。全ての装置に使いまわしができる「特別じゃない普通のもの」の象徴のようなボール。
転がす、というシンプルな遊びの先に物理の法則がある。

さて。個々の展示について紹介してはみたものの、チルドレンズミュージアムの展示は時折入れ替わっている。私の手元にある「世界のミュージアムを紹介した本」に載っている展示は、訪問した時には、どれも残っていなかった。チルドレンズミュージアムにとっては、展示の中身は、時代に応じで変わるものであり、大事なのは、「ハンズオン」という考え方なのだろうなぁ。

そして、忘れずにいたいのは、ここは、世界中の幼児教育関係者が知る「スゴイ施設」だけれど、子どもたちにとっては、そこが自分たちの居場所だと思えるかどうかが全てだということ。
歴史や理屈ではなく、そこにいる子どもたちこそを観ていたい。


■訪問データ

Boston Children’s Museum
-所在地:アメリカ合衆国
-訪問日:2014年5月から2015年3月の間に5~6回