キッザニアで働いていた頃、体験できる1つ1つの「しごと」を
こどもたちに、どのように説明をするかを考えて、
実際にこどもと向かい合うスタッフと共通の見解を持つことが
私の担当していた仕事の1つでした。
今でも忘れられない説明の1つが、「新生児室の看護師さん」の仕事の説明です。
最初、この仕事について、こんな言葉を書いていました。
「産まれてすぐの赤ちゃんのお世話をする仕事です。
赤ちゃんに対して、愛情を持って接することが大事です。」
けれども、プログラム全体の説明を読み返すと、どうにも、この冒頭の部分が気になります。
「愛情を持って接する」って何だ?
5歳のこどもに、「愛情を持って接してくださいね」って言って、
どんな振る舞いをしたらいいかが分かるんだろうか?
その時に思い浮かんだのは、キッザニア発祥のメキシコのこどもたちの様子でした。
赤ちゃんを抱っこしてあやしてね、というシーンでは
それはそれは優しく、人形ではなく本当の赤ちゃんのように上手に抱きかかえているのに
身体を洗ってあげるから洋服を脱がせましょう、というと
急に扱いが「どうでもいい感じ」になり、人形を逆さまにして、乱暴に服を脱がせていたのです。
こんな風にならないように、最初から最後まで
人形ではなく、1人の大事な赤ちゃんって思いながら、お仕事して欲しいよね、と
仲間たちと何度も話してきました。
そう、「愛情を持って接する」っていうことを
こどもたちが理解できる言葉にすれば、それは「大事に思ってる気持ちを伝える」ことではないか
そんな風に想い至りました。
最終的に、冒頭の部分は、こう伝えることにしました。
「産まれてすぐの赤ちゃんのお世話をする仕事です。
赤ちゃんのことが大好きだよ、大事に思ってるよってことが
伝わるように、赤ちゃんに優しく触れたり、抱っこしたりしてくださいね。
みなさんの大好きだよ、っていう気持ちは赤ちゃんにも分かりますからね。」と。
心の中の、「こども像」と対話をするだけで、自分の中に新たな気づきが生まれます。
こどもに伝える、その視点が、何か本質を引き出してくれるように思うのです。