親子あそびの場では 私はエンターテイナーにならない方が良かった

「あそびの専門家」としての取り組みの中には、〈子ども〉だけでなく、〈親子〉や〈大人/お父さんお母さん〉に向けた活動があります。

今日は、そういう親子や大人に向けた活動の時に、何を意識して場をつくって良いのか、気づいたことを書きます。

大人に向けた取り組み

親子や大人に向けた活動、というのは、児童館などの親子が集まる場所などで、絵本やわらべ歌を楽しむ場を開催したり、親子の遊びを紹介したり、保護者の方とお話をするような会の実施です。子どもたちに楽しんでもらうことはもちろん大切にしているのですが、実施の目的としては、保護者の方が、子どもとの遊びを知ったり、ちょっとした気がかりを相談できたり、気晴らしになったりすることを、より強く意識しています。

私自身、子どもたちが小さい時には、児童館や親子の遊び場など、〈子どものための場所だけれど、それよりも、保護者である私にとって必要だった場所〉の存在に本当に支えられました。

小さな子どもとの毎日の中で、毎週決まっていく場所があることが本当に有難く、児童館の「0歳児親子クラス」には、せっせと通っていました。育休中の私にとっては、社会に開かれた扉でした。

だから、児童館や子育て支援センターで、何かやって欲しいというお話を頂くと、とても嬉しく、あの頃お世話になった方たちからのバトンを次に繋ぐような想いで、向き合ってきました。

オンラインでの開催にチャレンジ

ただ、コロナ禍ということもあり、もう随分長い間、同じ場に集まる〈対面の活動〉は実施できていません。その代わり、オンラインでの活動がぐーーーっと増えてきました。

私はずっと、ごく小さい子どもには、なるべく手触りのあるもの、五感を使うものに充分に触れてもらいたい、と考え、なるべくリアルな体験を大切にしてきました。コロナ禍という事情がなければ、子どもとオンラインで関わるなんて、きっと考えもしなかったと思います。

でも、人の移動と、対面での出会いをなるべく減らしつつも、小さなお子さんと暮らす保護者の方たちが孤立しない方法は、オンラインしかありませんでした。必要ならば、やるしかない。そう思って始めてみれば、思ったよりもスムーズに開催でき、それどころか、オンラインだからこその良さもありました。

オンラインあそび講座の実践はこちらに詳しいレポートを記載しています。

オンラインの魅力① 安心できる場所で遊べる

一番印象的だったのは「場所見知り」がないことです。もちろん、オンラインでのコミュニケーションが初めて、という親子の場合は、最初は不慣れさに対しての緊張が見られる場合もありました。でも、それを乗り越えてしまえば、子どもたちは、むしろ「おうちにいる」という環境のおかげで、リラックスできている場合が多かったのです。

これまで、0~3歳くらいまでのお子さんとの遊びの会では、その場に慣れるまでに時間がかかり、(その間、保護者の方は、ずっとお子さんの様子が気がかりで)終わり頃になってようやく調子が出てくる・・・という場合も数多くありました。それを考えれば、最初から安心している状態は、楽しむための心の準備ができていて有難く感じました。

またオンラインで一緒に遊ぶ時間が終わった後も、各ご家庭で、場所を変えずにそのまま遊び続けられることも魅力的でした。子どもたちが楽しくなってきて、もっともっとこんなことしたい・・・と感じてくれた時に、遊びを中断しなくていい。気持ちが盛り上がったその場で、そのまま遊び続けられるのは、オンラインを始めてみないと気づかないメリットでした。

オンラインの魅力② 大人がしっかり遊べる

そして、何よりも強く感じた良さは、対面よりもずっと深く「親子で遊ぶ」ことが実践できたことです。

対面のイベントの場合は、〈親子遊び〉と言いつつも、講師という立場の私自身がいかに子どもを楽しませるか・・・ということに意識が向きがちでした。保護者と子どもがお互いに向き合って遊ぶこともありましたが、保護者と子どもが同じ方向(絵本だったり、私の動きだったり)を見て楽しむ、という場面が多かったかもしれません。

でも、オンラインの場合、家にいるのは、お子さんと保護者の方だけです。題材や遊び方はこちらから提示するけれど、子どもと直接向き合うのは、保護者の方自身です。

だから、対面の遊びイベントに比べれば、保護者の方の出番は増えたと思います。モノを準備したり、お子さんを促したり、一緒に遊んだり。お休みするヒマもなかったことでしょう。

そのおかげで、保護者の方にとっては、遊びを実践する時間になりました。「みた」のではなく「やった」。だから、どんな風に遊べばいいのか、何を用意したらいいのか、我が子はどんな遊び方を好むのか、ばっちり体験できたはずです。だから、オンラインの時間が終わって別の日でも、改めて親子で同じように遊んだり、そこからどんどん違う遊びへと広げていったり、という風に、保護者の方の「遊びスキル」が、ぐん、と伸びたんじゃないかと思うのです。

親子の時間はその後もずっと続く

そう考えてみれば、今までの対面の活動の時だって、〈親子のための時間〉は、親子がしっかり遊び、大人もちゃんと経験してもらう、ということを、もっと意識したらよかったんじゃないかしら。

私が、その場を楽しんでもらおうと、あれこれ準備して、絵本を読んで、歌をうたっても、その時楽しかった、で終わってしまうことの方が多かったかもしれません。保護者の方にとっては、ふっと休憩できる時間だったかもしれないし、それはそれで意味があると思うけれど、その後、自宅で親子で遊ぶことの想定が足りなかったように思います。

大切なのは、その場限りのことではなく、その後もずっと続く親子の時間をサポートできるかどうかだよね、とちょっと反省しました。

「何かをしてあげる」だけが、保護者の方のサポートじゃなかった、と、改めて思いました。お父さんお母さんと子どもたちの時間は、その後もずっとずっと続いています。私がエンターテイナーとして、その場限りの楽しさを提供することよりも、保護者の方たちが、毎日をゴキゲンに生きていけるようなヒントを提供することの方が大切だなぁ、と改めて思うのです。

何かをする、助ける、という関わりだけではなく、保護者の方自身が、これから先、自分でできることを目的に情報をお伝えする、ということも、「サポート」なんですよね。

長い目で見て、本当に役立つ「サポート」が何なのかということを意識しながら、親子に向けた場を運営していこうと思います。
そろそろ対面の場が実現できそうかなぁ。