【季節のおすすめ絵本】11月〈前編〉:仕事って、すてき

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

「お仕事の絵本」を紹介したくて、いつ記事にしようか、いつ記事にしようかと、わくわくしていました。
そして、やっぱり「勤労感謝の日」がある11月だな・・・と思い至ったのです。
思い至ったのですが、この、毎月のおすすめ絵本の記事を書き始めたのって、実は昨年12月から!ということで、早く紹介したかったお仕事の絵本、ほぼ1年間温め続けて、満を持しての紹介です。今月は、たくさんあるので、2回に分けてお届けしまーす!

まずは、働く、という物語が、1枚の絵から伝わってくる本から。


『しごとば』 鈴木のりたけ:作 ブロンズ新社
1つ1つの〈しごとば〉が、じっくり観察されて、細かく細かく描かれています。
お寿司屋さんのカウンターにあるものも、電車の運転席にあるものも、全てが、あるべくして、ある。ただの絵として、1つ1つのモノが描かれているのではなく、そのモノの目的を知った描き手が、1つ1つに物語を感じつつ描いています。だから、全ての絵が生きている。
人が描かれていなくても、そこに働く人が、動画として見えてくるような、そんな気がするのです。

この絵本には9つの職種が出てきます。でも、もう1つ、その全てを網羅する「絵を描く」「絵本として人に伝える」という仕事のことも、「プロの仕事」として感じられるような、そんな1冊なのです。仕事と仕事がつながるしかけにも遊び心があって、宝探しのような面白さも隠れています。

ここに描かれた仕事以外にも、もっともっと色々な仕事の物語を知りたくなるから、続編・続々編と次々と発売されているのも納得です。

絵本には、絵を読む楽しみがあります。そして、絵を読むことを、もっともっと味わえるようにと、文章で描かれたこと以上のストーリーを、絵の中に忍ばせてくれている絵本もあります。
『しごとば』は、「絵を読む楽しみ」がぎゅぎゅぎゅっと詰め込まれた本ですが、そんな絵本をもう1冊ご紹介します。


『これ だれの?』 みやにしあきこ:作 ブロンズ新社
お道具から始まる仕事図鑑です。
お仕事を先に見せるのではなく、お道具が見開き一杯に登場して、そのお道具を使うお仕事って何だろう・・・と思いめぐらすことのできる絵本。
お仕事の場面の中から、前のページに出てきたお道具を見つける遊びも楽しめます。
そんな風に楽しんでいると、お道具が、ただのモノではなくて、1つ1つに物語があることをしみじみと感じます。プロというのは、道具1つ1つにもこだわりがあり、道具のほうも、1つ1つが役割を持っているのですね。
こういう本を1冊持っていると「おかーさんが一番好きなのはどれ?」「じゃあお父さんは?」とか、「絵の中にある○○を探そう」とか、絵本の楽しみ方が色々に広がりますね。

でもね、本当は「仕事」は絵本の中ではなく、子どもたちの生活の隣にも、沢山あるはずなんです。そんな、自分の身近な「仕事」の存在に気づく絵本もあります。


『町たんけん はたらく人みつけた』 秋山とも子:作 福音館書店
実際に、身近な町を歩いているような気持ちになる絵本です。絵の中の道をたどってあるけば、多くの「はたらく人」に出会い、その「はたらく姿」を知ることができるのです。
ここに、こんな仕事があるよ、と教えられるのではなく、自分でじーーーっと見て、「みーつけたっ!」って、見つけたことは、きっと印象に残るだろうと思います。
1人1人の「はたらく人」に、最初から焦点をあてるのではなく、町全体の景色の中から、あそこにも、ここにも、こんなにも、「はたらく人」がいるんだね、と見つけることで、多くの仕事が関わり合って自分の生活があることに、感覚的に気づくことができそうです。

いつもの場所が、ちょっと視点を変えるだけで、全く違って見えることがあります。絵本を読んだ後には、いつもの自分の町が、発見だらけになるのかもしれません。

子どもが小学校2年生の時、生活科の授業で実施した「町たんけん」にボランティアとして同行したことがあります。5~6人のグループに分かれたこどもたちが、地域のお店や施設に見学に行き、インタビューするという内容でした。

インタビューの質問内容を、子どもたちが、自分たちで事前に考えているところがすてきだな、と思ったのです。
それは、通り一遍の質問ではなく、見学予定の場所にちゃんと関心を持って出てきた、自分なりの「ハテナ(=疑問)」でした。

その日、お店を訪れたこどもたちは、教わった通りにきちんとご挨拶をしてから、手持ちのメモを見ながら、担当の方へ次々と質問していました。
質問することに必死で、メモを取るのを忘れては、全部聞き直すことが繰り返されても、お店の方は丁寧に、何度でも答えてくださいました。

そんな風に、ちょっと、いつもよりも〈よそゆきの顔〉でインタビューして、そして、教室に戻ってきたこどもたちは、一転、緊張から解き放たれて大興奮!
パン屋で売ってるパンが120種類とか、コンビニの飲料冷蔵庫のヒミツとか、そんな「発見」を伝えたくて伝えたくて仕方なくて、みんなが一斉にしゃべっていました。

子どもたちは、「仕事」をこんなにもすてきだと思ってくれているんだと、改めて嬉しい気持ちになりました。そして、「仕事」ってことを意識する最初が、「知りたい」や「わくわく」なのは、いいなぁ、と思うのです。

今日ご紹介した絵本たちが、そんな風に、「知りたい」や「わくわく」を通して、仕事に出会うきっかけになれば嬉しいです。

前編では、【自分たちの生活の近くには、色々な仕事がある】と気づく絵本を紹介してきました。後編は、個々の「働くひと」の魅力に出会える絵本を紹介していきます。