2006年10月5日。
キッザニア東京の創業の日です。
10年が経ちました。
創業の頃は2歳から体験ができました。
その時2歳だったちびっこは、6年生になり
コア世代と言われた4、5年生は、成人して
中学生の多くは、社会人として、働いています。
キッザニアの創業は、当時の私たちにとって
新たな価値観を世に問うチャレンジでした。
―仕事は、こどもにとっては楽しみが詰まっていること
―面白おかしいことだけが、こどもの楽しみではないこと
―おとなが、こどもに関わらないことが、彼らのためであること
―おとなが、こどもに関わらないことが、彼らのためであること
仕事って実は楽しいよね、という価値観は
案外、すんなりと共感が拡がったように思います。
大人の人たちからの「こどもの頃に体験したかった」という声を沢山頂き
「お仕事体験」というイベントが、一気にわっと増えました。
企業や商業施設による大々的なイベントだけではなく
地域の行事や、学校のPTA行事で、お仕事体験的なものをやりたいので
「ミニ・キッザニア」とか「○○(学校や地域の名前)・キッザニア」という名称を
つけてもいいでしょうか・・という問い合わせも、たくさん、たくさん頂きました。
一方、
「おとなが、こどもに関わらないことが、彼らのためであること」という姿勢は
なかなか、同意して頂けませんでした。
「こどもが、自分でやる」ことを「待つ(=手出ししない)」スタッフの姿勢は
批判され、非難され、クレームの対象になりました。
今にして思えば、
理念を一番に思うばかりで、スタッフの辛さも分からず
まだ母親になる前で、お客様の気持ちも分からず
その頃の葛藤を、エラそうに語る資格はないのかもしれません。
クレームを受けながらも、スタッフはこどもを待ち
批判をしながらも、通い続けてくださるお客さまがいて
何より、こども自身が、確実に、「自分でやる」ことの醍醐味を感じてくれて
「おとなが、こどもに関わらないことが、彼らのためであること」という考え方は
ゆっくりゆっくり、浸透していきました。
何年くらい過ぎた頃でしょうか。
お客様自身が、「キッザニアは大人が手出しをしないから
こどもの成長が感じられる」と、言ってくださるようになりました。
こどもと、おとなは、
その時々によって、相互に色々な役割を持ちます。
お世話する/される、という関係である時期もあるし
教える/教わる、という時もある。(教わる/教わる という時もありますね!!)
そのことのかけがえのなさは、自分が母親になって、よく分かります。
同様に、見守る/行動する・・・という関係が必要な時が、いつか訪れます。
それは、こども自身が自分で歩もうとする時。
自分で感じ、考え、決断し、前に進もうとする時。
その「時」は、親たちが思っているよりも
ずっと早く訪れるように思うのです。
その時に、おとな達は準備ができているか?
我が子の歩む道を、彼が自分で決めたことだと、肚を括って見守れるか?
きっと、その覚悟が問われるのでしょう。
キッザニアでは、大人たちも
その覚悟の疑似体験をしているのかもしれません。
キッザニアのコンセプト・ストーリーの中には
Get ready for a better world という言葉あります。
今よりもっといい世界へ。
準備を始めるのは、こどもだけではない。
それを見守るおとなたちにも、準備が必要です。
ムシロ、おとなはこどもの手を離し
自分の道で、自分のやり方で、いい世界を築く役割の1つを担ってもらいたい。
そんな、親とこども、おとなとこどもでありたいと、想うのでした。
キッザニア東京 創業10周年に寄せて
(現在、私はもう内部の関係者ではなく、1人の母親の感慨として、記しました。)