新しいテーマで、あそびを紹介していこうと思います。
絵本から広がるあそびです。
私と息子の絵本ものがたり
個人的な体験からお話します。
息子が通っていた保育園は、3階建ての建物の1階と2階で、3階には、区立図書館がありました。毎日、保育園を出ると、建物の逆側の階段を駆け上がり、図書館に行くのが、〈いつものコース〉でした。
図書館は、入ってすぐのところが児童書と絵本のエリアになっていて、目に留まった本を何冊も抱えて、借りて帰りました。読み終わった本は、登園の時に、時間外ポストに入れて返却しました。ポストにコトン、コトン、と1冊ずつ本を入れるのも、楽しみの1つでした。
図書館は、宝の山みたいな場所でした。
1冊気に入った本が見つかれば、同じシリーズや同じ作者のものがすぐに借りられるのも魅力でした。
もし好みと違ったとしても、すぐに返却して、また新しい本が借りられると思えば、本を選ぶハードルはぐっと下がりました。
知らなかった本に、たくさん出合いました。
気づいたら絵本は私と息子の共通の話題になり、相互に分かり合える合言葉にもなりました。
雨の日に傘をさして「あめがふったら ぽんぽろろん」って歌いながら歩いたり、旅行先で駅弁を買う時に「しっぽを挟まれないようにね」って言ったりしました。
「森のピザを作りたい」「パンやさんで、おおきな ぱん、買いたい」って息子が言った時にも、あ、あの絵本みたいにしたいんだな、って、共通のイメージを思い浮かべることができました。
そんな風に、絵本の真似っこをすることは、私たちにとって、絵本を読んでいるうちに、ごく自然に行きついた楽しみ方だったのです。
絵本×体験 という魅力
何年か後になって、子どもの育ちのことを、学び始めました。
絵本を読み、そのイメージを元に遊ぶ、という幼児向けのカリキュラムを作っている方からも、お話を聴きました。
私自身の実感があったので、絵本×体験という組み合わせの楽しさは、すごく納得できるものでした。そして、この魅力をもっと伝えたいと考えるようになりました。
児童館や子育て支援センターなどの絵本の会や、保護者の方向けの講座などでは、一例として『やさい』(平山和子:作 福音館書店)という絵本と体験との組み合わせをお伝えしています。
この絵本は、畑で育った野菜1つ1つが、やおやさんに並ぶ様子が描かれています。絵も文章も、とても丁寧な絵本です。
優しい文章は、子どもに語り掛けたい、そのままの言葉です。写実的な絵は、葉っぱの形にも、茎の色にもウソがなく、誠実で生命力を感じます。
親子で、絵も文章も楽しんだら、今度は五感を使った体験をご紹介します。
「絵本に出てきたトマト、買いに行こうか?」って目的があれば、八百屋さんやスーパーに行く、という〈いつもの買い物〉が、〈わくわくするお出かけ〉に変わります。
店頭でトマトを見ながら、「絵本に出てきた、おっきいトマト、どれかな?」「あ、ちっちゃいトマトもあるね」「黄色いトマトもあるね」「どれにしようかなー?」と、子どもに話しかけることが増えます。
家に買って帰って、トマトを触ってもいいでしょう。つるっとした手触りや、柔らかい感触に出合います。ぎゅっと握らずに、優しく扱うことも経験します。鼻を近づけて、においも確かめましょうか。(ぜひ大人も!)
もちろん食べるところまで楽しめます。離乳食の時期でも、ペーストにすれば食べられる食材ですね。「絵本に出てたトマト、食べようね」って言いながら、味わえます。
こんな風に、絵本を入り口にして、親子の体験へとつなげて、広げていくことができます。
もちろん、買い物に行ったり、野菜の手触りやにおいを確かめたり、それを食べたりする体験は、絵本がなくてもできるかもしれません。でも、絵本があるおかげで、大人にとっては〈何をしたらいいのか〉のヒントがもらえます。子どもにとっては、体験していることがイメージしやすくなります。
絵本って、すごく便利に活用できるんです。
絵本は親子の関わりを助けてくれる
絵本は、親子の関わりを助けてくれるものだと思っています。
その「関わり」というのは、絵本を読む時間だけの話ではありません。
絵本という共通の話題があり共通のイメージを共有していることで、日常生活の中でも、親子の会話が増えたり、遊びの選択肢が増えたり、想いが伝わりやすくなったりすると思うのです。
ですから、絵本を入り口にして広がる遊び、というのは、〈絵本を使って、こんな風に親子で楽しく過ごせるよ〉という実例でもあります。
中には、あまりにも日常だったり、ささやかだったりして、「これがあそび?」と思うようなものもあるかもしれません。(例えば、窓ガラスを伝う雨をずっと見ている、とか、気に入った言葉を真似して何度も何度も繰り返す、とか。)でも、生活の中で、ちょっぴりでもわくわくできることがあれば、それはみんな「あそび」です。
そう言えば自分も、子どもの頃は、こんなちょっとしたことも楽しんでいたよなぁ、って思い出して、親子で遊ぶことのハードルをぐっと下げて頂けたら嬉しいです。
絵本を、【あそびのカタログ】として使ってみた実例を、ご紹介していきますね!