「こどもの絵本」の世界を切り拓いた人

こどもの本

私は学生時代、児童文化研究会、という仰々しい名前のサークルに、

かなりの時間と想いを費やしておりました。

名前は仰々しいのですが、活動内容は

人形劇や影絵劇を小学校で公演したり、

未就学から小学生くらいのこどもたちと駆け回ったりと

「こどもに遊んでもらう」というものでした。

 

もちろん、その頃の、楽しくて楽しくて仕方のない時間が

今の仕事にもつながっているのは言うまでもありません。

 

卒業して、児童出版社に勤務した後輩の職場を訪ねた時

書架に並んだ本を見ながら、彼が教えてくれました。

「この人も、先輩なんですよ。」

確かに、帰宅して名簿を見ると、最初のページにお名前がありました。

 

渡辺茂男さん。

『しょうぼうじどうしゃじぷた』『もりのへなそうる』などの創作絵本や

『エルマーのぼうけん』『どろんこハリー』などの翻訳で知られる方です。

私は、くまくんのシリーズ『よういどん』や『どうしたらいいのかな』が好きで

絵本の会でも、よく読んでいました。

 

渡辺茂男さん『心に緑の種をまく』を読みました。

古典的名作や、ご自身の手がけた本にまつわるエッセイ

絵本のある子育て、そして、ご自身の絵本との出会いが綴られています。

 

私たちが、今では当たり前のように手にする

翻訳絵本の数々の原書を、おそらく日本で誰よりも早く

アメリカの児童図書館で手にとり、こどもたちに読み聞かせ

それを翻訳するようになるまでのエピソードの1つ1つに

深い森の中に隠された、宝物のような輝きを感じました。

こんな風に、最初の1歩を踏み出した方たちがいたから

今の豊かな読書環境がある、ということの重みと有難さを

深く深く想うのでした。

 

何かがリレーされていくように感じます。

小さくとも、それを受け取って、今のこどもたちへも、しっかりと

その沢山の人たちの想いによって形になった絵本を

読み伝えていこうと、想うのでした。