0歳1歳の頃の「大人が思うような読み聞かせの枠にとらわれない」時期を乗り越え、親子のお気に入り絵本もできたかもしれません。長い絵本、特に物語のある絵本を聞いていられるようになると、いよいよ「読み聞かせしている」という気分になりますよね。
そんな時期、新たに立ちふさがる「不安」が、まことしやかに伝えられる「正しい」絵本の読み方。「大げさに声色を変えずに、淡々と読んだほうが、こどもの想像力を伸ばす」「身振り手振りは不要」「難しい言葉は絵を指さして伝える」などなど、耳にしたことがあるかもしれません。
このような説については、率直に言えば、「何をしたくて、わざわざ人のやることを否定するの?」と思っています。仮に「絵本を読んで賢くなろう教室」の主宰者が、新人講師に向けて行う研修だったら、分かります。「絵本と言うツールを使う幼児教室」として、その教室の目的に適う読み方をすればいい。
でも、ご家庭で、親子で読む絵本の時間は、親子のコミュニケーションの時間です。絵本と楽しく向き合い、親子で時間を共有することが目的なのだから、堂々と、自分たちの読みたい読み方をしましょうよ。
例えば、かいじゅうたちのいるところ、に出てくるかいじゅうたちは、こわそうで、ユーモラスで、愛らしい。このかいじゅうが、こわいヤツなのか、臆病なのか、友達みたいなのか・・・、どんな存在なのかは、子どもの想像に委ねよう、と考えれば、過剰に演出しないで自然体で読む方がいいでしょう。
一方、パパ劇場・ママ劇場として、パパかいじゅうが要所要所でわっとおどかしたり、ママかいじゅうのヘンな声がおかしくてゲラゲラ笑ったり・・・という親子のコミュニケーションを楽しむ方法もあります。それも1つの在り方です。
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『かいじゅうたちのいるところ』モーリスセンダック:作 神宮輝夫:訳 冨山房
それでは、絵本を楽しめるようになった頃、新たに訪れる「どう読んだらいいの?」について、もう少し見ていきます。。
1.「もういっかーい」に何度つきあえばいい?
子どもが絵本を好きになってくれればくれるほど、大人たちが悩まされるのが「もういっかーい!」の嵐です。
「もう1回」って言われてもう1回読んだら、また「もう1回」って言われてもう1回読んだら、また・・・と延々5回や10回読むことだって珍しくありません。
これにどこまで付き合えばいいのか?
ここまで、「気楽に」「無理なく」「大人も楽しく」とお伝えしつづけてきた立場としては、こう回答するのは憚られるのですが、できる限り何度でも読むことをおすすめしています。この欲求を満たされると、絵本好きになりやすいからです。
こどもは、同じことを繰り返し楽しむことを好みます。1度読んで内容が分かったらそれでいいのではなく、内容を知っていて、楽しみどころを知っているからこそ、その楽しみを何度でも味わいたいのです。だから、本当に絵本が好きなこどもにとっての、一番の味わい方が、「もういっかーい!」なんです。
現実問題としては、何回も何回も、無限にお付き合いできないかと思いますので、「あと何回読むか、相談しよう」って回数を区切ったり、明日も読もうね、って約束するなど、対処してください。この時に、大人が一方的に「あと3回」って決めない方が、子どもとしても納得感があります。
■やさいのおなか
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『やさいのおなか』きうちかつ:作 福音館書店
クイズ形式になっています。子どもたちは、もうすっかり答えが分かって、全部の答えを覚え、そこからまた改めて「良く知っている楽しさ」と言う分野に突入するのです。そのうち、1回読んだだけでは気づかないようなこだわりやヒントにも気づきますよ!
■きょだいなきょだいな
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『きょだいな きょだいな』長谷川摂子:文 降矢なな:絵 福音館書店
繰り返しの表現を楽しめる絵本。繰り返し言葉が耳に残りやすく、絵本の後半では、子どもたちも一緒に「あったとさー、あったとさ」ってつぶやいてるかも。
2.絵本を学びに生かしたくなったら
物語のある絵本、少し長い絵本が読めるようになると、つい絵本を使って教訓を伝えよう、とか、学習要素のあるものを読んで賢くしよう、という下心が出てしまうのが大人というもの。
そういう意図で絵本を読むこともあるでしょうし、こどもだって、多少下心のある絵本が混ざっているくらいで絵本キライになったりはしません。(でも意図は見透かされてると思った方がいいかもしれません。)
大事なことはバランスです。「苦手なニンジンを食べてもらいたい」「絵本を読んで語彙を増やしたい」「集中力をつけさせたい」という意図で読む時間だけではなく、教訓はないけれど楽しくて大好きという絵本や、そういう絵本を楽しむ時間も変わらず大事にしてくださいね。
それから、子どもたちにとって充分楽しいけれど、大人の目線から見たら「ちょっと役に立つ絵本」というのも、あるんですよ。「役に立つ」は、後になってじわじわ現れてきますので、ぜひ素直に楽しんでくださいね。
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『ことばのべんきょう』かこさとし:作 福音館書店
1つ1つの小物が詳細に描きこまれた、絵図鑑のような本。言葉を覚え始めた子どもにとって「これなあに?」「これなあに?」と1つずつ聞き、答えてもらうことを喜ぶ、というやりとりが延々と楽しめそう。大人にとっては、多少億劫に感じることはあるかもしれませんが、その面倒くさいことに付き合うからこそ、知的好奇心は生まれてくるのかもしれません。
「べんきょう」というタイトルがついていますが、べんきょうは生活の中にあるのかもしれない、と考えさせられます。
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『くるまはいくつ?』渡辺茂男:文 堀内誠一:絵 福音館書店
乗り物好きな子どもは、こんなにも色々な乗り物が出てくるだけで大喜びです。次は?次は?と、夢中でページをめくりたくなるかもしれません。無理に数を教える必要はないんです。読みたいように読めばいい。でも、きっと、どこかにインプットされています。
3.読み聞かせの楽しさを感じる絵本
声に出して読むと心地よい絵本、というのがあるんです。逆に、眼で読むにはいいんだけれど読みにくい、とか、絵本に共感できなくて読んでいて楽しくない、と、感じることだってあります。大人だって、それぞれの好みがありますから、当然です。
せっかくなら、声に出して心地よい絵本が良いと思います。読んでいる大人の心地よさは、聴いている子どもにも伝わります。
私の感じる「読み聞かせのしやすい絵本」を紹介します。子どもの反応も良いし、何より、文章の長さや、文の区切り方がちょうどよく、読みやすいのです。言葉のリズムもある。
個人的には、子どもたちには、こういう、言葉の美しいリズムの感じられるものに、沢山触れて欲しいと思っています。
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『せんろはつづく』竹下文子:文 鈴木まもる:絵 金の星社
電車好きさんの大好きな絵本。線路をつないでいるだけで、電車好きさんの期待が高まり、まだまだかとお話の続きにわくわくできます。子どもが好きなものが何か、どんな風に楽しみな気持ちを膨らますのかを良く知っている、子どもと真摯に向き合っている人が作った本なのだろうなあ、という気がします。
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『ぐりとぐら』中川李枝子:文 大村百合子:絵 福音館書店
定番の絵本は、やはり定番として愛され続ける理由があります。物語もすてき。絵もすてき。もちろん、あのカステラもすてき。そして、読んでみると、日本語がとても美しいことに気づきます。こういう言葉を、存分に聴かせてあげたい。「ぼくらの名前はぐりとぐら」の歌は、ぜひでたらめメロディーで歌ってくださいね。毎回違ったっていいんです。もしかしたら、親子だけが分かる歌が生まれるかもしれません。
絵本をどう読めばいいの?という質問に関する考え方をお伝えしてきました。「絵本を読む」ということの心理的なハードルが下がったら、とても嬉しいです。次回からはいよいよ、年齢ごとの発達を意識した「おすすめ絵本」を紹介します。