新卒して最初の職場だった玩具メーカーにも
創業から関わり想いの深いキッザニアにも
「ずっと現場の仕事をしていたい」という想いを
強く持つ人がいました。
玩具メーカーでは、
自分の手を動かしておもちゃを考える試行錯誤が
キッザニアでは、
日々訪れるこどもへプログラムを提供することが
その人たちにとって、働くことの醍醐味だったのかもしれません。
その働く姿には誇りがあって、こだわりがあって、
私には、輝いて見えました。
さて。
女性の活躍推進に向けた制度見直しの1つに
「育児休暇の延長」があります。
育児休暇延長と、活躍推進は、矛盾しているように感じますが
「こどもの預け先がないという理由で就業をあきらめる人を減らす」ため、
ということだと理解しています。
この制度の話だけで、いくつもトピックスが立てられますが
議論の中で、ふと目に留まったのが
「長い育児休暇はキャリア形成を妨げる」という考え方でした。
正直に言うと、目に留まった、というよりは
心がざわつくのを感じました。
キャリア形成って、何でしょうか?
責任ある仕事を担ったり、難しい仕事をやり遂げたり、仕事で尊敬されたりしたい。
そして、その証として、役職についたり、部下が増えたりしたい、ということが
「仕事で成功すること」で、
その成功に向けて、実績を重ねることが、キャリア形成ってことでしょうか?
「仕事での成功」のために、2年間のブランクが大きく不利になる、ということでしょうか?
もしその形だけが、「キャリア形成」なのだとしたら
「仕事で成功する」ということのイメージが、
限定的だなぁ、と感じます。
成功の在り方は、もっと、色々、人によって違ってもいいような、気がします。
冒頭の話に戻ります。
私が職場で出会った、現場で働く自分を大事にする人たちは
今の仕事をもっと良くすること、もっと楽しむことに情熱をかけていました。
出世することよりも、今のポジションでいることの方が
その人たちの心情的には、キャリアアップだと思うのです。
人それぞれに、違う「キャリア」がある。
そこに至る過程も人それぞれで、
育児休暇によって阻害されるキャリアもあれば
育児休暇によって促進されるキャリアもある。
どちらでもいいんです。
現場で力を発揮する人も、管理職で力を発揮する人も
そこに自分の納得感がある人は、それぞれに、魅力的だと思うのです。
だからこそ。
「どちらも選べる制度」が整うことと
どちらを選んでも認める度量が広がることを、私は求めたい。
キッザニアにいた頃から
「職業」ではなくて、「キャリア」を
どんな風に、こどもたちに伝えられるだろうかと
ずっと考えていました。
私が理解している「キャリア」は、
「どんな仕事に就くか」ということではなく、
人生全般のことです。
もう少し言葉を継ぐならば
就業も含め、社会の中で複数の役割を担いつつ
人とかかわりながら生きていく「自分の生きる道」が
キャリアであると、考えています。
就業による仕事で為すことには限りがありますが
家族・地域・職場・・・それぞれの場所に、自分の果たす役割があります。
そこで、自分が役に立てている実感を得ることが、広い意味での仕事であり、キャリア。
誰かのお役に立てることは、誰かのためではなく
そこで自分が生かされている実感を頂く、自分のためだと思うのです。
自分らしい道を歩む、という意味で
1人1人が、自分のキャリアを選べること。
制度が変わるだけではなく
「自分はどう生きたいか」を1人1人が自分で描けることを
大事に考えたいと思うのでした。