この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。
年末年始になると、にわかに登場する干支の動物たち。
今年1年間の主役のはずですが、1月も半ばを過ぎると話題にのぼらなくなってしまう気もします。(12月の末にバトンタッチ係としてちょっぴり登場しますけどね。)
今年の干支は、絵本にも沢山登場する「うさぎ」。ブルーナのうさこちゃんや、ピーターラビットなど、世界中で愛されるうさぎたちの姿も、すぐに思い浮かびますよね。
沢山ある「うさぎ」絵本の中から、民話や昔話に登場する「うさぎ」の絵本を紹介します。
まずは、日本のお話から。
『いなばの白ウサギ』谷真介:文 赤坂三好:絵 佼成出版社
古事記で有名なお話。海の向こうへ渡ってみたい、という素朴な好奇心と、わに(今で言うサメの仲間)の背中を渡るという知恵と、最後に余計な一言を言ってしまうちょっぴりのイジワル心を持つうさぎが、とても愛らしいと思うのです。
昔話で有名なうさぎと言えば、こちらでしょうか。
『かちかち山』おざわとしお:再話 赤羽末吉:絵 福音館書店
たぬきに騙されたおじいさんを助けるために、うさぎが活躍するお話。こちらのうさぎは、いなばのうさぎ以上に賢くて、そして、たぬきを懲らしめるためならば、かなり手荒な手段もいとわないのです。
それにしても、おじいさんが頼りにしたのが、動物の中では小さく、チカラも強くはないうさぎ、というのが興味深いと思いませんか?
次は、北米インディアンの神話を元にした絵本。
『天の火をぬすんだウサギ』ジョアンナ・トゥロートン:作 山口文生:訳 評論社
天の火を「ぬすむ」と言う表現には、どきっとしますが、地上に生きるものたちが、生き抜くために選んだ行動。ここに登場するうさぎもやはり賢くて、勇気があります。次々に登場する動物たちのチームワークも楽しく、また、私たちが生きていくためには、人間以外の自然から助けてもらわないといけない、というメッセージも、強く心に残ります。
ロシアのような寒い地域でも、うさぎは住んでいたようです。
『-ロシアの昔話-きつねとうさぎ』F・ヤールブソワ:絵 Y・ノルシュテイン: 構成 こじま ひろこ:訳 福音館書店
日本の『かちかち山』は、たぬきとうさぎの知恵比べでしたが、こちらは、きつねとうさぎの争い。きつねの理不尽さに、うさぎが立ち向かいます。物語そのものは、繰り返しのフレーズを楽しみながら展開されていきます。異国情緒あふれる絵も味わい深いです。
そして、うさぎ、と言えば、耳の長いのがトレードマークですよね。
『うさぎのみみはなぜながい -メキシコ民話-』北川民次:文/絵 福音館書店
これも、昔話の定番の語りの1つである、「なぜ」を伝える物語です。なぜ長くなったのか・・・という理由は、ちょっと想定外の展開かもしれません。決め手は、やっぱり、うさぎの「賢さ」?
こんな風に見ていくと、なんだか、世界中どの地域の物語でも、うさぎは賢く、ちょっぴり悪知恵も働き、したたかに生き抜いている感じがします。人々の暮らしのすぐそばで生き、チカラはなくとも知恵を働かせている、という、そんなイメージがあるのかもしれませんね。
うさぎ年の今年、みなさまも、知恵を働かせて、良い1年をお過ごしください。
2022年1月には「むかしあそび」の絵本をご紹介しました。