この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。
8月が終わると、昼間はまだ暑いのに、朝夕はふっと涼しい風が吹いてきますよね。そして、ふと気づくと日が暮れるのが早くなっていて、夜の時間が長くなっているなぁと感じます。
こんな季節は、やはり、夜空を見上げたい。昔の人もきっとそう思ったのに違いありません。9月はお月見の季節ですね。
絵本も、おつきさまをテーマにしたものを選んでみましょう。
『おつきさまこんばんは』林明子:作 福音館書店
おつきさま絵本の定番の1冊です。おつきさまのやさしい表情と、ゆったりとした言葉を味わうことができます。ごく小さな人に向けた絵本って、こんな風に、特別な物語がなくとも、ゆったりと、絵と言葉に出会えるものがいいなぁと感じられる1冊です。
小さい人に向けた絵本をもう1冊。
この絵本は、息子が8か月くらいの頃、一緒に読んでいたら「ふわっ」のところで、声をたてて笑った、という、私にとっては、とても暖かな思い出の1冊なんです。
『おつきさますーやすや』青島左門:作 福音館書店
寝る前にぴったりの絵本です。お月さまの動きが、優しい擬態語で表現されています。絵も心が落ち着く色合いで、お月さまが揺れるように、ゆぅらりと眠りにつけそうです。
おつきさまって、何だか手が届きそう・・・と思う気持ちは、世界中どの地域の子どもも感じるものなんですね。
『パパ おつきさまとって』エリック・カール:作 もりひさし:訳 偕成社
おつきさまと遊びたいな、という娘の願いをかなえるために、軽やかに行動するパパの絵本。シンプルだけれどダイナミックな仕掛けが楽しくて、おつきさまがどんなに遠いのか、どんなに大きいのかと、思いを広げることができそうです。
おつきさまを取りにいけなくても、お話をすることはできるかも・・・。
『ぼく、お月さまとはなしたよ』フランク・アッシュ:作 山口文生:訳 評論社
おつきさまに話しかけるくまの子。大人の目で見れば、1人芝居かもしれないけれど、おつきさまのことを大切に思い、プレゼントを贈りたいと思うくまの子の心が本物。きっと思い込みではなくて、おつきさまとちゃんと心を通わせることができたのだと思うのです。
そして、夜と言えば思い出す、この本。
『よるくま』 酒井駒子:作 偕成社
夜、寝ている男の子のところにやってきたくまの子。夜みたいに真っ黒な、よるくまのお話。
お母さんを探すくまの子の一途さと、くまの子と一緒に探す男の子の優しさ、そして、全てを包み込むような〈くま母さん〉の暖かさに、胸がきゅっとなる絵本です。
いかがでしたか。
どれも、ゆったりと心に沁みるような絵本です。
そして、絵本もいいけれど、こんな季節は、親子でゆっくり空を見上げてみるのもいいですね。
すてきな夜をお過ごしください。