この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。
毎日暑いですね。
8月のテーマは「おひさま」にしよう、と思っていたのですが、連日のあまりの暑さと、ぎらぎらと照り付ける太陽のパワーを感じているうちに、「うん、今が、おひさまの絵本だな」という気持ちになりました。
というわけで、予定より早めてエネルギー溢れる「おひさま」の絵本をご紹介します。
まずは、読んでいるうちに笑顔になる1冊から。
『おひさま あはは』 前川かずお:作 こぐま社
おひさまも、ことりも、おおきなきも、みんなみんな「あはは」と笑う絵本です。黄色い絵本。「あ」音の多い絵本。その色と音から、身体的に、ぬくもりを感じる気がします。「あはは」「あはは」と読んでいるうちに、一緒に「あはは」と笑いたくなっちゃいそうです。
おひさまが大好きなくまくんのお話。
『きのうのおひさま、どこにいったの?』薫くみこ:作 いもとようこ:絵 ポプラ社
くまくんが本当に愛おしいのです。おひさまが大好きすぎて、「昨日のおひさま」を探しに、冒険に行く姿が本当に一生懸命で、応援したくなります。子どもたちには、「くまくんのイメージする おひさまだらけの情景」が大人気。いもとようこさんの絵がぴったりはまる、ほっこりする物語です。
おひさまを待ち遠しく想う気持ちが伝わる1冊です。
『おひさまパン』エリサ・クレヴェン:作 江國香織:訳 金の星社
絵も美しい。言葉も美しい。とりわけ私は、言葉が好きです。江國香織さんの紡ぐ言葉は、簡潔で、きっぱりしていて、格調高い。子どもの読むものだからと、聞き慣れた言葉だけを選ぶのではなく、大人が本気で選んだ言葉を届けようとする崇高さを感じます。ヨーロッパのおとぎ話のような風合いの絵ともよく調和して、パンのあたたかな匂いに包まれる気がします。
次は、もう少し存在が身近な「おひさま」のお話。
『おひさん』たかべせいいち:作 くもん出版
どちらかと言えば、ナンセンス絵本に属するのかもしれません。いきなり村を訪れた「おひさん」は、ユーモラスというか、シュールというか・・・。とはいえ、おひさま、という大きな存在を、こんな風にごくごく身近に、友達のように感じるところに、日本らしいおおらかな敬意を感じます。ちょっぴり民話のような素朴さが魅力です。
そして、おひさまは出てこない、おひさまの絵本。
『なつのいちにち』はたこうたろう:作 偕成社
絵が饒舌な絵本、ってこういう絵本だなぁ、と思います。少年の、なつのいちにちの情景からは、せみの声も、土のにおいも、まとわりつくような暑さも感じます。そして、何よりも、夏のおひさまの日差しをずっとずっと感じる絵本です。
なつのいちにち、あえて言葉に出さなくても、じりじりと照り付けるおひさまが、そこにある。誰もが懐かしさを感じるような、夏の情景が詰まっています。
そして夕暮れのひととき。
『なんでもない なつの日〈夏の夕ぐれ〉』ウォルター・デ・ラ・メア:詩 カロリーナ・ラベイ:絵 海後礼子:訳 岩崎書店
「なんでもない」時間として綴られる暮らしの中に、本当は、きっとすべてのものが詰まっているのかもしれないなぁ、と感じます。おひさまが沈む、1日の終わりの時間。特別なことは何もないかもしれないけれど、こんな風に1日1日を重ねていくことが、生きていくってことで、そして、何よりも幸せなことかもしれない。
真っ赤な夕日を見ながら、心が穏やかになります。
いかがでしたか。
まだまだ暑い日が続きます。おひさまのエネルギーを一杯感じながら、身体に気を付けてお過ごしくださいね。
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