この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。
どんぐりが好きです。
道端でどんぐりを見つけると、宝物を見つけたような気持ちになり、拾いたくなります。拾わなくっても、わくわくします。
どんぐり遊びの記事を書いた時には、沢山の人に読んで頂けて、きっと、みんなも、どんぐりが好きなんですね。
という訳で、今月は「どんぐり」の絵本を紹介します。
『どんぐり とんぽろりん』武鹿悦子:作 柿本幸造:絵 ひさかたチャイルド
『どうぞのいす』でおなじみの、柿本幸造さんの絵です。愛らしくて、かわいいのに、甘ったるくはない動物たちの姿が、とても微笑ましい。言葉のリズムもよくて、どんぐりを見つけた嬉しさに、ほっこり暖かい気持ちになります。さぁ、ここから、どんどん集めますよ。
『ひろった・あつめたぼくのドングリ図鑑』盛口満:作 岩崎書店
「どんぐり」と一言で言っても、色々な種類があり、色々な形があるんですよね。そんな色々などんぐりが「色々」という言葉では表せないくらい、ずらりと並ぶ、まさに「どんぐり図鑑」です。
自分が好きなものがあれば、それをよく見て、違いを見つけたり、特徴を見つけたり、これは何だろうって興味を持ったり、どうしてこんなに形が違うのかな・・・って考えたり。そんな風に、物事に興味を持つと、どんどん解像度が高り、さらにもっと知りたくなる・・・という良い循環が起こると思うのです。そういう「物の見方」に気づくヒントが一杯詰まった本だと思います。集めたどんぐりを、何に使いましょうか。
『どんぐりだんご』小宮山洋夫:作 福音館書店
どんぐりの色や形、大きさに注目したあとには、どんぐりの生かし方を紹介してくれます。子どもたちと、おもちゃやオブジェを作る時に、こんなものがあるよ、と紹介しようと思って手にとった絵本でしたが・・・なんと、本当に食べられる「どんぐりだんご」の作り方が載っているんです。
そうそう、栄養豊富などんぐりは、昔の人たちは食べていたんだよなぁ、と、遠い時代の生活にも、ふと思いを馳せることのできる絵本です。
なお、残念ながら現在では品切れとのこと。「かがくのとも」らしい、生活のすぐ隣にある「かがく」に目を向ける良い本ですので、古本などで見つけたら、ぜひ!どんぐりをテーマにしたこんな物語も紹介します。
『どんぐりさがして』ドン・フリーマン&ロイ・フリーマン:作 やましたはるお:訳 BL出版
都会の公園に住むリスが、家族のためにどんぐりを探してくるお話です。北アメリカには、都会の公園に住むリスが、思いのほか多くいるんですよね。人とともに住むリスたちのリアルな生活が伝わってきます。日頃、公園でリスを見かける地域の子どもたちにとっては、このお話を見ると、いつもの光景に、新しい物語を感じるようになるのかもしれませんね。そして、最後に。ぜひぜひ手にとってページを開いてもらいたい絵本がこちらです。
『どんぐり』 たてのひろし:作 小峰書店
命の美しさと荘厳さに、息をのみました。
1ページ1ページ、繊細な線で描かれた世界はあまりにも美しく、雄弁で、ずっとずっと観ていたくなるようです。
言葉はなくとも、そこに命の営みを感じます。モノクロの線にも豊かな色を感じるけれど、ところどころ、意味を持って着色された部分は、さらに光ってみえるようです。
命への畏敬の想いを感じます。静かな心でページをめくりたい本です。いかがでしたか。
かわいくて楽しいどんぐりから、植物への興味、そして、命のつながりまで、色々な魅力を持つ「どんぐり」。本物のどんぐり拾いも、絵本も、どちらも、じっくり味わってみてくださいね。