この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。
まずは、12月。
12月は、「おくりものの絵本」を紹介します。
プレゼントって、贈られる人だけでなく、贈る人にとっても、幸せな体験だと思うのです。相手が喜ぶ姿を思い浮かべながら、あれやこれやとプレゼントを選び、準備する時間は、何よりあったかい。
そして、寒い寒い季節だからこそ、お互いに相手を想い、暖め合いたい気持ちになるんじゃないかなぁ、と思うのです。
もちろん、12月でプレゼント、と言えば、「クリスマスプレゼント」を思い浮かべるパパサンタ/ママサンタも多いかもしれませんね。
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『クリスマスにはおくりもの』五味太郎:作 絵本館
五味太郎さんのクリスマス絵本は、『まどからおくりもの』が有名です。しかけ絵本になっていて、五味太郎さんらしいユーモアが味わえる本。
一方この『クリスマスにはおくりもの』は、もしかして、世界中のサンタへの応援の想いで描いてくれたのかしら、と思うくらい、サンタ目線の絵本。
最後の言葉が本当に暖かく、子どもたちも、私たち自身も、自分では気づかないうちに、沢山の人たちに暖かく見守られて、日々生きているのかもしれない、という気持ちになりました。
玩具メーカーに勤務していた時、12月の週末は、部署に関係なく、誰もが販売応援のために、おもちゃ売り場の現場に立ちました。1日中立ちづくめの仕事なので、体力的には疲れるけれど、好きな仕事でした。おもちゃたちが誰かの元に届いていく、という実感が嬉しかったのです。
サンタさんの手伝いをする仕事だ、と思っていました。ちょうど、この本の「ましろ」と同じ気持ちです。
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『こうさぎましろのおはなし』佐々木たづ:作 三好碩也:絵 ポプラ社
ましろ、と言う名前のうさぎの男の子のお話。ましろは、プレゼントがもう1コほしいなぁ、と願う、等身大の男の子。その素直さが本当に愛おしいのです。ましろの話を、そうかそうか、と受け止めてくれるサンタさんも、本当にすてき。
小さな子どもたちも、おくりものを受け取るだけではなく、何かを贈り、誰かの助けになれることを喜ぶ気持ちを知っていると思うのです。きれいな落ち葉や、木の実や、道端の花や、自分で折った折り紙や、作品・・・子どもたちは、彼らにとっての大切なものを、気前よくプレゼントしてくれますよね!
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『しんせつなともだち』方 軼羣:作 君島久子:訳 村山 知義:絵
子どもが安心して読める「繰り返しの物語」の中に、誰かが、誰かを想う暖かさが繰り返されます。贈り物が届くたびに、暖かい気持ちがどんどん、どんどん増えていくようなお話です。
『しんせつなともだち』で描かれたのは、寒くて苦しいからこそ、誰かを想う気持ちが増える、という様子でした。
そう言えば、こんな昔話も「誰かを想うおくりもの」の話ですよね。
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『かさじぞう』瀬田 貞二:再話 赤羽 末吉:絵 福音館書店
定番の昔話の1つ、と言ってもいいですよね。大人になって読み返すと、じさまも、ばさまも、置かれている状況に対して前向きで、明るくて、感謝を忘れていないことに、はっとします。
昔話は、同じお話でも、複数の絵本が出版されていますので、自分にとって、しっくりくるものを選ぶといいと思います。出版社ごとの傾向もあるので、お気に入りの出版社を決めるのも、選ぶ基準になるかもしれません。
私は、昔ながらの日本語を大事にしているもの、絵が力強いもの(パステル調のタッチではないもの)、信頼できる出版社のものをおすすめすることが多いです。
さて、最後に、もう1冊、クリスマスをテーマにした絵本です。
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『ふくびき』くすのき しげのり:作 狩野 富貴子:絵 小学館
もしかしたら、少しばかり「できすぎ」だな、って感じる人がいるかもしれません。子どもたちが本当に真っすぐで、正直で、思いやりがあって、一生懸命で、「いい子すぎる」って。
でも、本当は、どんな子どもも、こんな風に、いいところを沢山持っているんだと思うのです。絵本に登場するこの子たちも、姉弟の奮闘の合間に、ケンカしたり、小さなイジワルしたり、駄々をこねたり、ちょっぴりウソついたり・・・していると思うのです。ただ、「おくりものをしたい」という彼らの気持ちだけにフォーカスをあてれば、こういう姿になるんじゃないかなぁ。
私は、商店街で出会う大人たちが大好きで、大人たちの振る舞いに、ぐっと胸が熱くなりました。
寒い季節がやってきます。
暖かい家の中で絵本を読む時間が、親子にとっての何よりの〈おくりもの〉になりますように。