【季節のおすすめ絵本】7月:冒険に出かけよう

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

夏は冒険の季節、という感じがしませんか? 夏休みがあるから、という理由もあると思いますが、暑くて暑くてエネルギーに満ちた「夏」という季節は、なんとなく未知の世界への興味を掻き立ててくれるような気もします。

夏休みにちょっとした冒険(はじめて1人で泊まる、とか、キャンプに行く、とか、はじめて1人で電車に乗る、とか)を控えているならば、その前に冒険の絵本を読んで、勇気をもらうのもいいかもしれませんね。

と言う訳で、7月は〈冒険に出かけよう〉というテーマでご紹介します。

冒険の絵本、と言えば、まず思い浮かぶこの絵本から。



おしいれのぼうけん』ふるたたるひ/たばたせいいち:作 童心社
冒険に必要な要素が、全部、あるんです。友情も、勇気も、アクションも、成長も。舞台装置とキャラクターも輝いています。
絵も文章も、子どもに媚びるところがなく、大人の全力が、どーんと力強く表現されていて、ずっとずっと愛され続けているのも当然だと感じる珠玉の名作です。

日常の続きに冒険がある物語をもう1冊。こちらも世界中で愛され続けています。



かいじゅうたちのいるところ』モーリス・センダック:作 じんぐうてるお:訳 冨山房
ベッドルームを入り口に、かいじゅうたちの世界を訪れたマックスのお話。こちらは冒険そのものは濃密に描かれている訳ではありませんが、日常のすぐ隣に、こんな非日常があるのかもしれない、と思うと、ドキドキしますね。ちょっと、いかついけれど、決してコワくはない、ちょっぴりユーモラスなかいじゅうたちは、言葉は多くないけれど、何だか1匹1匹の性格まで伝わってきそうで、魅力にあふれています。

おにの子あかたろうくんたちも、冒険に出かけます。



つのはなんにもならないか』きたやまようこ:作 偕成社
いつものように、縄跳びやボール遊びをして遊ぶ、そのすぐ近くに冒険の舞台が広がる、ちょっぴりカジュアルな冒険です。
物語では、冒険そのものよりも、冒険の中で困難に立ち向かう姿を通して、自分自身の良さに気づく、というところが描かれます。
大人は暗喩的に深読みもできますが、おにの子たちの懸命の奮闘が微笑ましく、読んでいて気持ちのよい絵本です。

「緊張感のない冒険」というと語弊があるかもしれませんが、ほっこり微笑ましい冒険があってもいいですよね。



もりのへなそうる』わたなべしげお:作 みやわきゆりこ:絵 福音館書店
のんびり、ほのぼの、ほっこりした雰囲気の「ぼうけん」です。森の中で未知の存在に出会う、という意味では、確かに「ぼうけん」なのですが、終始肩のチカラが抜けていて、くすっと笑いたくなるおかしさに溢れています。種明かしをしてしまうと、わたなべしげおさんが、2人の息子さんをモデルに描いた物語。なので、視点が、冒険の真っただ中にいる男の子たちよりも、すこーし客観的な、男の子たちの冒険を微笑ましく見守る大人寄りなんだと思うのです。
とはいえ、このお話は、子どもたちも大喜び。2人の男の子と、へなそうるのやり取りに、大盛り上がりですよ!

ここまでは、物語の冒険でしたが、「本当の冒険」に行くとしたら、どんな準備が必要なのかしら。そんな現実的な「冒険」を思い描くことのできる本もあります。



冒険図鑑さとうち藍:文 松岡達英:絵 福音館書店
まさに「図鑑」と呼ぶのにふさわしく、冒険に必要な情報が、ぎっちり詰まっています。必要な荷物と荷作りの方法、野外トイレの作り方、食事、危険への対処・・・と淡々と(それでも臨場感を持って)綴られる情報を読んでいるだけで、冒険に行ったような気分になります。もちろん、実際にリアルな冒険に赴く時には、現実的に役立つ情報満載です。

そして最後は、ちょっと目先を変えて、こんな本を紹介します。



ぴょこたんのめいろあそびこのみひかる:作 あかね書房
ぴょこたん、といううさぎと一緒に、迷路を1つ1つ解いていきます。ぴょこたん目線に立てば、いくつもの迷路をクリアしなくてはいけないので、確かに大冒険。
ぴょこたんのシリーズは、めいろ遊びだけではなく、なぞなぞ遊びもあり、30年以上前からのロングセラー。私自身、子どもの頃に大好きだった記憶があります。ドリルや、アニメのキャラクターだけではなく、こんな風に、頭を使い手を動かす遊びが絵本の形で、ずーっと続いていることが、何だか嬉しくなって紹介しました。アタマの冒険もいいですよね!

いかがでしたか。
冒険の絵本、そして、この夏の、自分たちなりの何かしらの冒険もぜひ楽しんでくださいね。