経験が浅いからこそ、できることがあります。
それは、時間がある、体力がある、自由がある、という、若さの特権という話ではなく
経験がない・知らないことが、逆に強みになるという事例です。
玩具の会社で働いていた頃、取引先の生産管理をしていた女性が
隙なく、仕事をこなすタイプの人でした。
工場での生産に必要な指示書やデータを必ず納期に工場に届けるために、
数日前からの適格なカウントダウンと、厳しい催促で評判でした。
「また怒られちゃった。」と、同僚たちは苦笑いしながら話していたものです。
まだ入社して数年の若手社員でした。
あんなに若いのにしっかりしているね、と話す人もいましたが
彼女の厳しさは経験がないからこそ、でした。
一度、版権元の許諾の兼ね合いで、どうしても納期に間に合わないことがあり
その事情をお伝えしつつ、対処を相談した時の、驚いた表情と
「あぁ、そういう事情があるんですね・・・。」というコメントが印象的でした。
設計図面や指示書を手配するまでの仕事の流れ、
そこに関わるプレイヤーの多さと許諾事項の多さ
知識としては分かっていても、実感を得ないままに、「納期」だけを見ていたからこそ
妥協を許さない、厳しい催促ができたのだと、気づきました。
でも、そういう役どころの人が、必要です。
「色々な事情」が分かってしまい、つい催促の手を緩めるよりも
「ここの納期を逃すと生産が遅れてしまう!」と
厳しく催促する立場の人がいるから、スケジュールは守られるのは、言うまでもありません。
彼女の仕事ぶりは、経験が浅いからこその輝きだったと、今改めて思うのです。
新しい仕事を始める時、最初は誰しも初心者だし、分からないことだらけだし
大きな不安がつきまといます。
でも、「知らない今だからこそできること」があると思っていれば
その状況を逆手にとって、貢献できることだってあるかもしれません。
仕事が変わる、状況が変わる、そんなことを
前向きに受け止められたら、と思っています。