【はじめよう親子遊び】は、0~3歳くらいのお子さんがいるお父さん/お母さん向けに、どうやって親子で遊べばいいの?という疑問や不安にお応えできるように、具体的な「どうやって」をお伝えしていくシリーズです。
初めてはさみを練習する時、初めてクレヨンを使う時・・・など、道具や素材との初めての出会いが、親子ともに楽しいものであったらいいなぁと願って、記事を書いています。
今回は、前に記事に引き続き、〈クレヨン〉です。
前回の記事では、「はじめてのクレヨン」として、クレヨンとの出会いをご紹介しました。
クレヨン選びのポイントとして、まずはチカラの弱いお子さんでも描いたことが分かるように、やわらかいものがいいよね、とおすすめしつつも、「最初は描かないかもしれないよ」「描かなくてもクレヨンという色彩豊かなものに出会えただけで楽しいよね」という、出会いの日の遊び方をご紹介しています。
もちろん、「最初から描かなくてもいいよ」というくらい、気負わずにスタートして頂きたいのですが、でも、せっかくなら、描く遊び方も知りたいですよね。そうですよね。
ということで、クレヨンと出会ったばかりの、2歳前後くらいのお子さんと一緒に「はじめて描くクレヨン」の遊びをご紹介します。
1.描くことの楽しさに気づく
最初に「描く」ことに気づくまで、少し時間がかかるかもしれません。でも、あまり焦らないでくださいね。
「描く」ことに気づいてもらうためには、まずは、大人が楽しそうに描いて見せると、子どもも興味を持つかもしれません。真っすぐな線を引きながら「しゅーーーっん」とか、ドットを描きながら「てんてんてんてんてん」とか、「しゃかしゃか」とか「ごしごし」とか「ぬりぬり」とか、適当な擬音を付けて描いてみると、子どもが理解しやすくて、真似がしやすくなります。
同じ動きを真似したら、「しゅーーーっん、できたね」「てんてんてんてんだね!」と、一緒に楽しんでくださいね。
また「クレヨンの追いかけっこ」をしてみてもいいですね。お子さんと大人、1~2本ずつ好きな色のクレヨンを持ちます。クレヨンを人に見立てて、ご挨拶したり、お話したり、お散歩したり。クレヨンさんがお散歩するときに、ちょっと力を入れて紙の上を滑らせれば、もちろん、線が描けます。ごっこ遊びのように、歩いたり、追いかけっこしたり、ついて行ったりして遊ぶうちに、色々な線が描けていることでしょう。
2.描くための「紙」について
ところで、だんだん「描く」楽しみを知ってからは、どのような紙を用意したらいいでしょうか。昨日は、「はじめて描く時の紙は、4つ切りの画用紙がいいですよ」とご紹介しましたが、何度か遊んで、クレヨンで描く、という楽しみが分かってきたら、もう少し手軽に使える方がいいですよね。
おすすめは、1冊100円、1冊で40枚の「スケッチブック」です。紙は薄いですが、遠慮なくどんどん使えるのがいいところです。
描くことが楽しくなると、どんどん紙を使います。その時に、多少薄っぺらくても、ちゃんと裏が白い紙がいいです。また、子どもの中には、紙のすみっこに、ちょろちょろ、っとクレヨンを走らせただけで「おしまい!次の紙!」という風に振舞う人もいます。そういう時にも「まだこんなに白いところ残ってるじゃない!もったいないなぁ!」などと、言わなくてすむようにね。(きっと本人的には描き終わっているんですもの。余白こそアート、ってこと?)
3.「これなあに?」って聞かなくていいよ
子どもがどんどん色々な線を描いていくと、つい「これなぁに?」って聞きたくなっちゃうんですよね。あるいは、「これは赤いからりんごかな。」「あっ、にょろにょろ、へびかな」とか、勝手に形を類推したくなります。
でも、クレヨンで描くことは、「何かの物の形を描くこと」が目的ではありません。
クレヨンと紙がこすれる感覚を楽しんでいるだけかもしれないし、どんどん色が変わっていく様を面白がっているのかもしれない。その時の気分を表現しているのかもしれないし、さっきお昼寝の時の夢の色かもしれない。
だって、「表現」ってそういうことです。
でも、子どもは親切な人たちなので、「りんごかな?」って聞いたら「うん」って答えてくれちゃったりするのです。「これなに?」って聞いたら、何か答えてあげなきゃいけないなー、って一生懸命考えてくれる。でも、それが本当かどうかは分からないんです。合わせてくれているだけかもしれない。
ともあれ、「これなぁに?」、って聞かなくていいですよ。何か言葉で言えないようなものを表現していることが、すてきなのです。
4.作品を保管しておく時には、メモを残す
子どもの作品を保管しておく時には、作品を描いた年月日をメモしておくといいですね。作品のすみっことか裏側に、書き添えておいてください。もし余裕があれば、「こんな独り言を言いながら描いていた」「最近、こういうことが好き」など、ついでにちょこっと書いておくといいですね。そんなちょっとしたメモだけで、後から絵を見た時に、その頃のお子さんの姿を、くっきりと思い出すことができるんです。
5.巻いてある紙はむいていいよ
小さなお子さんは、クレヨンに巻いてある紙を、やたらむきたがりますよね。びりびり、って。私も、子どもが小さい頃は、「また破いちゃったねー」って言いながら、新しい紙を巻きなおしては、またすぐに破く・・・ということを繰り返していました。でもある日、造形の先生に教わったのです。「あれねー、子どもにはジャマなんですよ。」そうか!ジャマだから、むいていたのか。それじゃあ、せっかくジャマな紙を取ったのに、またかーさんが紙を巻いちゃったよ、あーぁ、って思われていたのかしら?
それはさておき、確かに巻紙があると、塗っている先と自分の手で持っている感触が違って、気持ち悪いのかもしれませんね。
さらに、紙がなくなると「側面で描く」という新しい表現方法が登場します。線ではなく、面で描く。そんな風に遊びって発展していくんですよね。
そんな訳で、我が家のクレヨンは、こんな勲章みたいな状態になっています。
6.もう少し年齢があがったら・・・
もう少し年齢が上がって、3歳を過ぎてくると、指の動きがもっとコントロールできるようになるので、色々な表現が楽しめます。
クレヨンで色々な線を描くことを目的としたワークを目にする機会もあることと思います。ぐるぐるとか、ぎざぎざとか、にょろにょろとか、色々な線を意識的に描くことは、その先の、鉛筆を使ったり、文字を書いたりすることにつながる大事な練習だよ、なんて言われるかもしれません。
ただ、「いわゆる学習」につながるかどうか、とは別軸に、色を選んで、模様を描いたり、線を描いたりするのって、楽しいなぁ、という気持ちは大切に持ち続けて欲しいと思っています。
クレヨン用のワークシートもありますが、「今までとは違う模様を描いてみるのって楽しいなぁ」って思えるお子さんは、楽しく使えばいい。「決められた線を描くのってつまんないから、真っ白い紙の方が好きだな」と思うお子さんは、無理しなくていい。それだけのことです。
4~5歳以上になれば、こすり出し(写真参照。凹凸のあるものの上に薄い紙を敷き、上からクレヨンでこすると模様が出る)、ひっかき絵(カラフルに塗った上を黒で塗りつぶし、そこを尖ったものでひっかいて絵を描く)、はじき絵(クレヨンで描いた後に絵の具で色を塗ると、クレヨンのところだけ水をはじく)などなど、クレヨンの特性を生かした様々な「ワザ」も楽しめるようになりますが、まだまだそんなに焦らなくても大丈夫。
7.まとめ
クレヨンで描く、という遊びは、好きになればなるほど、ずーっと遊び続けられます。真っ白い紙に自分で何かを描き出すことが好き、と思える気持ちは、その子どもにとって大きな財産になると思います。
あまり細かなルールを決めて小さなお子さんの興味を削いでしまうよりも、伸び伸びと、自分なりの楽しみを見つけながら「描く」ことを楽しめたら、すてきだな、と思っています。ぜひ、おおらかな気持ちで、楽しんでくださいね!