【絵本から広がるあそび】10さつ目『もりのピザやさん』

絵本を入り口にして、そこから広がるあそびのアイディアをご紹介します。
今回の絵本はもりのピザやさん(舟崎靖子:作 奈良坂智子:絵 偕成社)


どんな絵本?

『もりのピザやさん』という題名は聞き覚えがなくても、「もりはおもしろランド」というシリーズの絵本のどれかは、目にしたことがあるかもしれません。(リンク:偕成社のウェブマガジンで紹介されていました。

自分の姿そっくりの「あなたの形のケーキ」を作ってくれる いたちのおかしやさん。もりの仲間たちの体に合わせて自転車をカスタマイズしてくれる あなぐまのじてんしゃやさん。仲間たちの特徴を生かしたおもちゃが楽しい もりのおもちゃやさん。・・・などなど、全部で15冊。

1つ1つのお話も、もちろん楽しめるのですが、もりの日常の出来事が描かれているので、同じ仲間が、他のお話でも登場して、それぞれの個性が、だんだん分かっていくのも楽しいのです。

その楽しさを際立たせているのが、表紙と裏表紙をめくってすぐのところに描かれた「もりのちず」です。

大きな なまずのいけ を真ん中に、もりの仲間たちのお店 兼 住居が、びっしり描かれています。15冊の中には、何かを探してあちこちと歩き回る、と言うストーリーも多くて、地図を片手にお話を楽しむうちに、自分も、もりの仲間の一員のような気持ちになります。

さて、今日の絵本、「もりのピザやさん」は、大きな大きな「自分たちのもりのピザ」を作るお話です。

あそび もりのピザをつくろう!

もちろん、絵本を読んだ子どもたちがやりたくなることは、〈もりのピザづくり〉です。時間に余裕がある時に、やってみましょう。

親子クッキングを楽しむコツは、「やりたいところ」と「手を抜くところ」のメリハリをつけることです。

絵本の中では、粉をこねてピザ生地を作る場面よりも、もりの地図をピザとして再現する場面の方が、丁寧に描写されていました。

ですので、今日やりたいのは、トッピング、と狙いをさだめて、他の部分は、こだわりません。ピザ生地は、「焼くだけ」の状態になったものを買ってきます。日頃から作り慣れているご家庭の場合も、ピザ生地を作るまでは、大人がちゃっちゃとやっちゃいましょう。

トッピングのために、具材を切るところは、お子さんが「やりたい」と言えば、準備してもらいます。でも、「早くトッピングしたくて、待ちきれない」ってことならば、ここも、大人がちゃちゃっと準備すればいいのです。

クッキングなんだから、子どもが全部自分でやりとげなくちゃ、とか思わなくていいです。
料理は楽しいだけじゃなく地味な作業も経験するべき、なんて考えも、今日は横に置いておきましょう。

1日の体験で、準備も、段取りも、刃物の扱いも、調理の楽しさも・・・全部全部を一度に伝えようとすると、大人にとっても、子どもにとっても、ハードルが高くなってしまいます。毎日1つずつでもいいし、スモールステップでもいい。

そして、今日は、「コレを作りたい!」という、子ども自身から湧き上がってきた〈やってみたい〉を形にする日です。

さて。生地も具材も用意できたら、子どもの出番です。
もりのピザをイメージして、トッピングしましょう。

と言っても、「なまずのいけ」をイメージして、真ん中に溶けるチーズをどっさり乗せるのは、まぁイメージが付くのですが、他は「なんとなく」な感じになりそうです。

エリンギやにんじんを、四角や三角の形に切ったものや、丸いサラミやソーセージの輪切り、下茹でしたブロッコリーを小房に分けた木・・・などを配置してみてください。

完成したら、焼く前に写真を撮っておきましょう。

焼くとチーズが全体に流れ出してしまったり、ブロッコリーのてっぺんが焦げて黒くなったり、色々想定とは違う結果になるかもしれません。(だから、写真撮影は「焼く前!」なんです。ここ重要。)

焼く前とちょっと変わっちゃったね、もりのみんなも同じだったのかなぁ、でも、すごくおいしいね、かえるさんのおうちいただきまーす、とか言いながら、あつあつのうちに、楽しく頂いてください。

*   *   *

「もりのピザ」は、私にとって、絵本を入り口にして、親子で大がかりに遊んだ、最初の経験です。
私たち親子は、この「もりはおもしろランド」のシリーズが大好きで、地図を指でたどりながら仲間たちの通った道を確かめたり、もりの仲間と仕事を結び付けるクイズを出し合いっこしたりして、何度も何度も絵本を楽しみました。
そんなある時、「もりのピザつくりたい」って言われ、「あぁ、あのピザ!」と、こちらもすぐにピンときたのです。うん、あれは、作ってみたいよね。

チーズも具材も贅沢に使ったピザは、どこが池だか、どこが家だかも分からない、見た目は「ただの具沢山ピザ」でした。でも、私たちにとっては、紛れもなく「もりのピザ」で、そして、またひとつ、もりの仲間の一員になれた経験でした。

絵本から広がるあそびは、大好きな絵本があって、それを読むうちに、自分でもやってみたくなる・・・という、ものすごく自然な心の動きがあって、自然に始まるような遊びだと思っています。

これからも、絵本から広がるあそび、紹介していきますね。
親子で過ごす楽しみ方の参考になれば嬉しいです。