【季節のおすすめ絵本】4月:だいじょうぶ!

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

新年度ですね。
入園や入学、進級など、新しい環境での生活がスタートする子どもたちも、多いことでしょう。

新しい生活は、ドキドキします。

子どもたちもドキドキしていると思いますが、実は、お父さん/お母さんも、やっぱりドキドキしていると思うのです。

そこで今日は、子どもたち、というよりも、むしろ、お父さん/お母さんに向けて、「だいじょうぶ!」というメッセージをお伝えできる絵本をご紹介します。


ようい どん! わたなべしげお:文 おおともやすお:絵 福音館書店
よういどん、と元気にスタートしたくまたくん。障害物の網にからまったり、しりもちをついたりしながら、最後には満面の笑みでゴールします。
その姿を見ていると、障害物をうまくクリアできなかったり、転んだり、他の人とスピードが違ったりすることは、大した問題じゃないと思うのです。
私たち大人は、つい、子どもたちが「うまくできるだろうか」「痛い思いをしないだろうか」「遅れないだろうか」と気遣い、心配したり不安になったりします。でも、そういう不安を回避することよりも、〈それでもも大丈夫!〉って、思っている方が、ずっと毎日が過ごしやすくなると思うのです。
子どもたちは、きっと、「だいじょうぶ」です。このくまたくんの満面の笑みから勇気をもらい、自分の子どものことも「だいじょうぶ」って信じてあげたいと思うのです。

親だって、完璧じゃなくていいんだよ、と思える絵本を2冊。2冊とも登場人物は「おかあさん」なのですが、お父さんにもお母さんにも「完璧を目指さなくていいよ」と伝えたいと思っています。(お父さんを主人公にした、こういう内容の絵本も、これから増えるといいのにな。)


おかあさんのおべんとうたるいしまこ:作 童心社
遠足の日の朝、寝坊してしまったお母さんが大急ぎで作ってくれたお弁当のお話です。お母さんだって、寝坊したり、大事なことを忘れたり、失敗したり・・・うまくできないことは沢山あります。当たり前です。私は、お父さんもお母さんも、存分に「あ、まちがえちゃった」という経験をして、それを子どもたちにちゃんと見てもらうことって、とてもすてきだと思うのです。
誰にでも、うまくできないことって、あるよね。それは当たり前。大事なのは、うまくできなかった時にどうするか、例えば、誰かに助けてもらう、違う方法を考える、相手にごめんねって伝える、というところですものね。
寝坊してしまったお母さんが、大急ぎで作ったお弁当は、主人公の女の子にどんな想いを伝えたでしょう。

もう1冊。


かあちゃん えほんよんで』かさいまり:文 北村裕花:絵 絵本塾出版
こちらの絵本は、忙しそうなおかあさんを慮って、なかなか「絵本よんで」って言い出せない男の子の姿に、ちょっと切ない気持ちになる保護者の方もいるみたいです。
私自身、親子で絵本を読むことの魅力をお伝えしていますが、絵本って「読まなきゃいけないもの」ではないと思っています。読み聞かせと言う場の絵本は、親子がいい時間を過ごすことを助けてくれる小道具だと考えています。
とはいえ、「絵本を読んであげなくちゃいけない」って、プレッシャーを感じている人は、多いですよね。(私自身、まだまだ言葉が足りないなぁと思っています・・・。)
この絵本で私が好きな場面は、布団の上の親子の姿。絵本を読む、という形よりも、もっともっと強く親子がお互いを大切に想う気持ちが伝わってくるのです。
いつもいつも子どものためにいいことができる「完璧な親」にならなくてもいいんです。それでも、子どもたちは、ちゃんと、親の気持ちを受け取ってくれていると思いませんか?

最後に、1冊まるごと「だいじょうぶ」と語り掛けてくれる本。


だいじょうぶ だいじょうぶいとうひろし:作 講談社
おじいちゃんが、ぼくに話してくれる「だいじょうぶ だいじょうぶ」というメッセージ。ぼくの不安が具体的に1つ1つ語られてはいますが、おじいちゃんは「〇〇だから、だいじょうぶ」と、1つ1つの不安を取り除く処方箋をくれている訳ではないような気がします。
たぶん、おじいちゃんも、〈だいじょうぶ〉って言える根拠がある訳ではない。ないのだけれど、長く生きているうちに、「まぁ大概のことは、だいじょうぶさ」って思えるようになったんじゃないかしら。
子どもたちというよりも、大人たちの心に「だいじょうぶだよ」という声が響く本です。

いかがでしたか。
新年度は、お父さん/お母さんにとっても、不安が一杯かもしれません。自分のことじゃないほうが、より心配になったり、ドキドキしたりするものですよね。
でも、だいじょうぶ
おとなも、こどもも、うまくできないことや、分からないことや、ドキドキすることが沢山あっていいんです。それが当たり前。
うまくいかないことがあったって、きっと、だいじょうぶ、そう思って、新しい生活をスタートしてみてくださいね。